老親ろうしん

介護の原点……それは対等な人間関係にある

夫や舅からの自立へ

ものがたり

長男の嫁で専業主婦の成子(萬田久子)は、姑の死後、子どもと共に東京を離れ、残されたオトノサマ舅・兼重(小林桂樹)と奈良斑鳩(いかるが)で7年間を一緒にすごす。 舅との関係に疲れきっていた成子は、子どもたちの自立とともに離婚を決意する。

その頃かつて元気だった実母まさ(草笛光子)も、歩けなくなってしまい、兄弟間でたらいまわしにあっている。 事あるごとに長女長女と成子を叱咤してきた母とは犬猿の仲。 どんなことがあっても私は看ないから!と宣言する成子だが……。

夫(榎木孝明)と離婚、「家」や「嫁」から解放され、娘(岡本綾)と東京に戻り自立を志す。 ところが他人になったはずの兼重が「ただいまぁ」と転がり込んで来て……。 説得しても動じない、気づけば奇妙な同居生活がはじまっていた。

夫の信重に、離婚を切り出す成子 人生初めてお茶を煎れる舅の兼重 娘の聡子と共に自立を目指す成子

女性の生き方、高齢者の自立

企画にあたって

介護の原点は、対等な人間関係にあるのでは……。

映画『老親ろうしん』では、老親介護の生活を描くなかで、性別役割分担や、女の生きかたを問い直し、高齢者の自立をテーマにしています。 何もせずにお殿さまで生きてきた舅が、初めて一人の人間として元嫁と対等に向き合うことができた時、自立し、いのち輝かせるという感動。 介護する人・される人の人権を保障し、その人らしく生きるためになにが大切なのか。

この映画を観た人が、老親介護、なかでも介護保険を自分たちの問題として捉え、生き方・老い方について話し合うきっかけになれば……と願ってます。

誰もが人間として尊厳をもって生き死にたいと望んでいる

兼重がいる病院へ駆けつける成子

この映画を推薦します

岩波ホール総支配人 高野悦子

私は母の介護を十一年間、自宅で行ったが、それは想像以上に悪戦苦闘の毎日だった。 そして、母が九十七歳で死んだ時、気がつけば私自身も老人のお仲間になっていた。

誰もが老いてゆく。 そして誰もが人間としての尊厳をもって生き、死にたいと望んでいる。 人は老いの問題と真剣に対峙せざるを得ないのである。 槙坪夛鶴子監督の『老親ろうしん』は、原作者門野晴子さんの体験に基づく老人介護の生活を、感動的に描く。 槙坪さん自身も、老親を介護しながらの撮影だった。

この映画の中には、日本女性たちの希望が一杯つまっていて、見る者に勇気と共感を与えてくれる。 この作品は、介護保険が実施される以前の物語だが、この制度も女性たちの叫びをくみ取って、より良くなっていくことを、切に願っている。


予告篇動画を掲載

追記:

映画『老親ろうしん』のHDリマスター盤の予告篇動画を老親作品紹介ページに掲載いたしました。

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