いのちの大切さを子どもたちに
ものがたり
隆志、聡、実、大輔たちは希望が丘小学校の5年生。
女性の裸やセックスなどに興味を抱きはじめる年頃だ。ある日学校の帰り道、みんなでエロ雑誌のグラビアに夢中になって覗き込んでいるところを同級生の比呂子に目撃されてしまった。折から母が妊娠し、自分も初潮が始まったばかりの比呂子は、性に対して嫌悪感を抱いてしまう。
僕が生まれた時のこと、もっと詳しく教えてよ
隆志たちことを比呂子から聞いた洋子は、担任の岡部先生に告げ口したが、結局担任にもどうしていいかわからない。そこで教護教諭の水町先生に相談し、新学期から性教育の授業を行うことになった。まず、「いのちの大切さ」を語った水町先生の言葉に子どもたちはうなずいた。隆志も聡も比呂子も自分がどのようにして生まれてきたのか両親に聞いて、素直な感動を覚える……。
ひとを愛することの喜びを
企画にあたって
ひずんだ性観念を植え付けられる前に、少しでも早く正しい知識を子どもたちに伝えることによって、生命誕生のすばらしさと、自分のいのちの尊さ、そして他人のいのちの大切さを知り、「生きること」「死ぬこと」の本当の意味をつかみとってほしい。そして、ひとを愛することの喜びを感じとってほしい。そんな願いを込めてこの映画『子どもたちへ』をつくりました。
差別やいじめ、自殺、10代の望まない妊娠、中絶など今の私たちをとりまく環境は、あまりにも悲しい問題でいっぱいです。これらを真に解決するには、子どもたちからの正しい意識とたくましいエネルギーが不可欠なのではないでしょうか。この物語が、そのひとつの方向を示すことになればとも願っています。
パオ代表・映画監督 槙坪夛鶴子
1940年、広島に生まれる。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。映画・TV・教育映画に18年間スクリプターとして参加する。1985年企画制作パオ設立。デビュー作の『子どもたちへ』で文部省特選、第5回監督作品『老親ろうしん』で第17回山路ふみ子映画賞福祉賞、第20回藤本賞特別賞を受賞。
からだのことや、セックスのこと、
人を好きになるということ、そういうことをみんな知りたい
子どもたちは、直接間接に、ときには突出した性行動を通して、私たち大人にこうした要求をつきつけてきます。そんなときこそ、家庭と地域と教育現場が手をとり合って、子どもを最後まで信じ続けながら、愛と性について考え合いたいものと思います。女性スタッフを中心につくられたというこの映画『子どもたちへ』、教室や家庭や地域でせひご覧になってみて下さい。
原作者 坂口せつ子
長野県野岸小学校養護教諭 「愛と性・教育への挑戦」著
性教育は、特別な教育ではない
監修者のメッセージ
性教育とは、何も特別な教育ではなく、子どもの率直な疑問や知的要求にこたえ、いのちと愛と生き方を考える教育です。
映画『子どもたちへ〜いのちと愛のメッセージ〜』は、こうした子どもたちの疑問の核心にふれ、人間性と愛と生き方、そしていのちの重さについて、実にいきいきと考え合う、現場の教育実践に基づいてつくられたものです。とかく性教育というと、つい構えてしまいがちな先生方や父母の方々に、子どもと一緒に観ていただきたい映画です。
監修者 藤田和也
一橋大学助教授 「愛と性・教育への挑戦」共著